一匹の鯨に七浦賑わう

エンターテインメント殴り語り

漫画『僕の心のヤバイやつ』とラブソングのはなし

 オタクにはイメソン文化というものがあるらしい。自分の好きな作品、キャラクターの境遇・関係性に対してタイアップでも主題歌でもない楽曲を「イメージソング」として当てはめる遊びだそうだ。つまり、幻覚でガンギマリしながら好き語りをする限界オタクが「ではここで一曲お聴きください、〇〇で××*1……」と昼休み放送部ジャックをすることだそうだ。これまでに自分のiPodのプレイリストで架空のフェスやライブのセトリを組むことはあったが*2イメソンなるものには理解が及ばなかった。が、つい先刻奇しくも自分もまたその仲間入りをすることになった。

 

 つまり、僕ヤバだ。

 

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詳細は本編をたしかみてみろ

 

 

 これはもう新世界ですよ。新世界。このBUMP野郎がよ……………。

 

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 新世界、初めて聴いたときは「あのBUMPがいまさらド直球なラブソングかよ~~~ケッ! なぁ~~にがバンプオブチキンだお前らの名前はもうバンプオブタイアップチキンだよ!!」とか思ったもんですがそれはそれとしてめちゃくちゃ良い曲でもあり、跳ねるようなメロディーも歯が浮きそうな歌詞も青春恋愛脳汁ダバダバなティーンエイジャーっぷりが本当にすごい。これが10年以上前にラフ・メイカーとか乗車権を歌っていたバンドのなれの果てか……?

泣いていても怒っていても 一番近くにいたいよ
なんだよそんな汚れくらい まるごと抱きしめるよ
ベイビーアイラブユーだぜ ベイビーアイラブユーだ
ちゃんと今日も目が覚めたのは 君と笑うためなんだよ

 新世界というのはつまり、彼女と出会って世界が全く新しく見えるようになったということ。今まで「自分」しかいなかった世界に「彼女」が新しく加わったということ。 実際のところ世界そのものは変わってはいないんだけど、愛おしいと思う人がそこにいるだけで世の中の見え方がガラリと変わる、あるいは「彼女」を通して世界の新たな部分が見えてくる、「彼女」と出会い自分が変わったから世界の見え方もまた変化していく……。人ひとりとの出会いがこんなにも劇的なものになる、それが初恋、恋愛、青春、あるいは世の中のありとあらゆる甘酸っぱい概念、それらをひっくるめて「新世界」と表現するのは的を得た表現だと思う。こんなのもう……僕ヤバのイメージソングじゃねえか! どうなってんだこの世界はよォ~~!?

 

僕ヤバのイメソン候補を列挙してみる

 これだけで話を終えるのもあんまりなので「いっそのこと僕ヤバでひとつイメソン・プレイリストでもつくるか~」と思い個人的に僕ヤバ力(ちから)のあるラブソングを列挙してみることにする。

 

ヒーロー / supercell

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 ryoといえばメルトに始まり、聴いてるこっちが気恥ずかしくなるくらい青臭さ全開の歌詞が有名だが、「オタクに優しいギャル」という言葉が生まれるよりも早く陰キャボーイ・ミーツ・陽キャガールをポップスに仕立て上げたことはもっと知られても良いと思う。

友達と喋ってるその子の笑顔は あまりに可憐で
その姿は思い描いた 漫画のヒロインのようだ
ひとめ見て恋に落ちた ホンキのホンキで好きになった
でもね僕の容姿じゃ きっと嫌われてしまう

 正直言って歌詞そのものが黒歴史ノートと言って遜色ない。ラブソングと呼ぶにはあまりに出来過ぎで、現実には万に一つもない展開。上等である。だってこれは創作なのだから。「こうあってほしい」「こうなりたい」という希望の歌なのだから。

「私この人知ってる!」
周りは唖然 僕も呆然
「見ちゃったんだな あの机の絵をね
全部君が描いてたりするの?」
ああ!また笑われる だけどキミは
「ああいうの好きなんです」

 少年少女に過酷な試練を課すことに定評のあるryoだが*3、これについてはリリース時より人類総オタク化が進行した現代においてはワンチャン有り得るかもしれない。未来は無限大だ。

 

君の瞳に恋してない / UNISON SQUARE GARDEN

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 はっきり言って俺はUNISON SQUARE GARDENのことをいけ好かないバンドだと思っているが、この曲もマジで「いけ好かねぇ~!」と思っている。なにしろ「君の瞳に恋してない」のである。別に「君に夢中」でもないし「君の手を握りたい」とも言ってない。男の方は全然グイグイ来てない。

せめて君ぐらいの声は ちゃんと聞こえるように
嵐の中濡れるくらい 構わないからバスタオルは任せた

 そのくせ嵐の中に飛び出すくらいは平気でやるのだ。しかもこいつ傘とかレインコートとか長靴の用意もしていないときたマジでこいつ相手のこと好きじゃん。その一個前に「せめて君ぐらいの声は ちゃんと聞こえるように」とかめちゃくちゃスカしたこと言ってるくせによォ~!

君の瞳に恋なんて してはないけどわかる
大事なもの失った時 壊れちゃってしまってしまった気持ちは

 青春真っ盛りの恋愛模様ではなく、一通りの酸いも甘いも経験した後の、覚めた気持ちもそこにはある。あるけどお互いの信頼関係があってこそのスカしたノリであることが伝わってくる。ファンクのエッセンスすら乗りこなすマジでいけ好かない最高のバンド、それがUNISON SQUARE GARDENなのだ。

 

 

アイネクライネ / 米津玄師

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 陰キャ男子であれば誰しも一度はアイネクライネを聴いて枕を濡らしたことがあると思うが*4、それはそれとして大ブレイクしどんどんメジャーになっていって無事光堕ちする過程は市川京太郎と一緒である*5。よもや二度三度も隣の席のリアル系根暗陰キャ男子が光陰併せ持つスーパー系陰キャ男子にクラスチェンジするのを目撃する羽目になるとは思わなんだ……。

消えない悲しみも綻びもあなたといれば
それでよかったねと笑えるのがどんなに嬉しいか
目の前の全てがぼやけては溶けてゆくような
奇跡であふれて足りないや
あたしの名前を呼んでくれた
あなたの名前を呼んでいいかな

 アイネクライネはグッドエンド米津玄師であるが、バットエンド米津玄師はハチ時代のリンネ、ビターエンド米津玄師は春雷があるので闇の僕ヤバおじさん*6もご安心だ。

 

ラブソングを殺さないで / ピノキオピー

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巷で流行りのラブソングが 見事にあなたをスルーして
みんなの心へ突き刺さる それも ひとつの愛のカタチ

 ラブストーリーとは人生の余興である。古今東西、紀元前よりずっと昔から、くだらない男女のいさかいが絵画に、演劇に、小説に、音楽に記録されて現代に伝わっているのが何よりの証明だ。そして「ラブソングを殺さないで」は人生の偉大なる音頭である。どんなラブソングプレイリストや失恋ソングDJMIXであっても、ラストにこの曲を挿入すればあら不思議、どんなにくだらない男女のいさかいであってもそれは人生に不可分なものだと思わせてくれるのだ。

空虚の坩堝に身を投げて 天涯孤独と唾吐いて
誰にも愛されず 灰になる それも ひとつの愛のカタチ

 

 

(終わりです)

*1:ここに任意のイメージソングが入る。

*2:一度でもライブに行ったことのある人間なら「ぼくのかんがえたさいきょうのセットリスト」遊びをやったことがあるはずだ。ない?

*3:これの現在進行形は言うまでもなく「機動戦士ガンダム 水星の魔女」である。

*4:純粋にラブソングとしての共感もしくは「あの米津玄師が直球のラブソングを!?」という驚き、あるいはある種の落胆を込めて。

*5:類義語に「星野源」がある。

*6:正直幾年経っても生き生きと湧き出してくる様はある種尊敬に値する。目つきもいい。公園で会ったら私は距離を置くだろう。

最近読んだオススメラブコメ漫画を挙げる

 私ラブコメ漫画って学生時代は全然読んでなくて社会人になってから手を出したジャンルなんですよね。なので「こういう恋愛がしたい!(あるいはしたかった……)」という感想よりも「人は恋をすると挙動がおかしくなって頭がバグってくるんだ……なるほど……」みたいな楽しみ方をしているわけですが他にもこんな読み方をしているような人がいそうなのでこんな記事を書きました。

 

僕の心のヤバイやつ

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 言わずとしれた陰キャ男子・陽キャ女子のスクールカーストブコメの金字塔。アニメ化も発表され、市川京太郎のCVがどうなるのか今から戦々恐々している……だって声変わり前/後の演じ分けができる声優さんを呼んでこなけりゃいけないんですよ? やれんのか市川京太郎……やれんのか??? 僕ヤバについては過去にいくつも駄文を書き連ねているので詳しくは割愛します。

azi-tarou.hatenablog.com

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 さて、現在の僕ヤバは新学期編がスタートして新しいクラスメイトが続々と登場してきたけど当の本人たちはヒロインの両親了承済(ヒロインの両親了承済!?)の両片思いという「付き合ってないけど恋人がやることはセッ……以外はおおよそ経験済み」という状況です。ずっと前からこんな感じじゃねえか!?どうなってんだ? とにかくどう見ても普通の関係じゃないのでイツメンからもシンメンからも「いつ付き合うの?」という無言の見守りが発生しており「フラッシュモブサプライズ告白を(やらせる)」を企画しようとする地獄のようなパリピ女が出てきてヤバい。良かれと思って乗り気なのが余計にヤバい。という感じで二人の世界から家族や学校、仕事という場所で二人は上手くやっていけるのかという段階に入っているんですね。

これが僕ヤバの””現在地点””だ(なんで当人よりも先にに親御さんに告白してるの???)

 序盤の「市川の陰キャ故の屈折した感情」「山田の言動からカモフラージュされた気持ちを謎解くミステリー」のような要素は徐々に鳴りを潜めていって、「新しいクラスという環境で、お互いがお互いの気持ちや距離感に折り合いをつけつつ、未来へ向かって歩んでいく」というのが今の僕ヤバなんですが、ぶっちゃけ並の大人より難しい恋愛をやっとる。なにせ告白してオッケーだったらハッピーエンド、みたいな話の纏め方じゃなくて、市川は山田と肩を並べられるようにとグングン人間的成長を遂げ、山田はモデルや役者など自分がやりたい仕事を見据え……これはもう人生……二人の人生譚ですよ。

 そんな徐々にグラデーションが変わるような二人の関係、そして物語のドキドキの展開が僕ヤバの現在地点なのです。読みましょう。

 

隣のお姉さんが好き

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 僕ヤバと並ぶ中学生ラブコメの巨塔「好きな子が眼鏡を忘れた」の作者が送る、陽キャ男子中学生のたーくんと、映画好きなお隣に住む女子高生お姉さんのラブコメ。めちゃめちゃ面白いです。

 このヒロインの女子高生お姉さん……心愛さんなんですが、初めはミステリアスなお姉さんな感じで話が進むんですけれど、徐々にそのミステリアスな仮面が剥がれていき、実はマイナー映画好きで人付き合い下手、捻くれ者かつ自己卑下的、口を開けば「お前それたーくん相手だから許される発言やからな……いい加減にしとけよコイツ……」な後ろ向き系女子であることが明らかになっていく。そしてどんな致命的発言やムーヴを完璧にすくい取る自己肯定感200%のハイパー男子たーくんの鮮やかなフォローがすごい。若さ故のデリカシーの無さを即座に理解・反省し真摯に謝罪する将来有望無敵のハイスペ中学生男子!

リアタイ勢全員の喉がヒュ…となった瞬間 たーくんを信じて読み進めてください

 毎話挿入されるイベントスチル絵みたいな1ページまるまる使った心愛さんの大ゴマも見どころ。たーくん目線から見ると「マジでこの女外面はいいんだよな……」となります。とにかく読みましょう。

 

少年の好意を煙に巻いて躱そうとしたら理詰めでボコボコにされているミステリアスなお姉さんの図

 

ぷにるはかわいいスライム

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 ホビー大好きキッズ御用達のコロコロコミックから放たれた新たな刺客!それが人外スライム少女をヒロインに据えた「ぷにるはかわいいスライム」です。「エッあのコロコロがラブコメ漫画を!?」はい、そうです。1話が「これは二人が友達じゃなくなるまでのお話……」というナレーションで締めくくられているヤバさを知ってもらいたい。

開幕から”癖”がすごい 降参です 許してください

 そしてこの漫画のめちゃめちゃ重要なポイントは「ぷにるは自分のことをホビー(おもちゃ)だと自覚している」点です。ぷにるはコタローに可愛いと言ってもらうためにあの手この手を試すけれども、それは子供の頃のように一緒に遊びたいから(まさに彼女は人間に遊ばれてこそのホビーだと考えているから)であり、対するコタローはぷにるが女の子の姿をしているから逆に異性として意識してしまう……という、ラブコメであると同時に「自我が芽生えたおもちゃは人間と対等な立場に成り得るのか?」というサイバーパンクじみた疑問を投げかけてくるのです。是非読みましょう。

 

オオカミくんは早川さんに勝てない

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 尾上くんは最近新しい学校に転入してきた中学生。だけど声は小さいし運動は得意じゃないし何の取り柄もないただの陰キャ……というのは世を忍ぶ仮の姿。実は彼の家系には狼男の血が流れているのだ……!

このモチモチのフワフワの犬っころがよ……

 いやどう見ても柴犬やんけ!! という導入から始まるのだが、普段彼を馬鹿にしている早川さんが尾上くんの柴犬姿を見てキュンとしてしまってさあ大変、愛憎入り乱れる壮絶なラブコメが幕を切って落とされた!

 とにかく作者が描くキャラがモチモチのコロコロで大変愛らしく、動物愛と異性愛がこんがらがって頭がバグってる早川さんはめちゃくちゃ可愛いし、二人の関係の進展と尾上くんの正体がバレるかバレないかという絶妙なバランス感覚で進行するストーリーも素晴らしい。全2巻で完結するお手軽さもグッド。読みましょう。

こ、これだよ!動物愛と異性愛がこんがらがって頭がバグる瞬間!!うわー最高!!!



おぼこい魔女はまじわりたい!

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 不登校のクラスメイトは実は魔女見習いで、一人前の魔女になるためにたまたま学校のプリントを届けに来た主人公の男の子ににセッ……を持ちかけてくるというまるでエ○漫画みたいな導入だけど思ったより真面目な漫画です。本当です信じて。

 主人公クン(かわいい)の貞操概念がめちゃくちゃしっかりしてるのでさすがに本番まではいかないけど、それはそれとしてなし崩しに付き合い始めて頻繁にキスするし普通に裸を見せつけられたりしてる(魔女は裸がユニフォームらしい。なにそれ?)というアレ。しかし官能描写よりも悩めるティーンエイジャーの恋愛・性事情のほうが前に出ている……と思う……!

貞操概念がめちゃくちゃしっかりしている……!(中学生がセッ……は普通にダメだろ!)

 メインの話はこの魔女見習いの女の子が徐々に学校に慣れて、少しずつ人並みの生活に馴染んでいく……という流れなんだけど、せっかくの世間から隔絶されていた貴重な魔女っ子が世俗にまみれていく(言い方ァ!)姿に一抹の寂しさを覚えてしまう。が、ちゃんとセッ……の話も継続しており、無謀にも男子中学生集団でコンビニでコンド…厶を買ったりするのでマジで大丈夫? 君ら中学生だよね??? 結末を見届けるまで読みましょう。

 

正反対な君と僕

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 ウオオオーーーッ優勝!!ゴルバットみてえな八重歯のギャルが無敵状態で駆け抜ける最強のラブコメ、正反対な君と僕!!!こいつはすごいですよ、マジで。

 ギャルでパリピな鈴木さんはクラスの人気者だけど、人付き合いの良さからつい相手の顔色をうかがいがちで、本音を言うのをためらってしまう。一方クラスメイトの谷くんは物静かで目立たないけれど、思ったことははっきり言うし誰が相手でも対応を変えることがない。そんなクールなところに憧れと好意を抱いていた鈴木さんだったが、ある日下校時刻に谷くんとバッタリ遭遇して……というのが1話のあらすじ。これはネタバレなんですけれど二人はこの1話で付き合い始めます。ウオオオーーッ正反対な君と僕完!!とはもちろんならずに、物語はカップル成立後の二人と、その周辺のクラスメイトたちに焦点が向かいます。

1話にして人生最大の大立ち回りみてえな告白シーンが読める最高の漫画(シリアスとコミカルの配分が天才的すぎてマジですごい)

 話を振る間合い、手を握る間合い、キスをしてもいい間合い、相手の家に押し掛ける間合い……告白が成就したのはいいけど、付き合うって何?どういう関係?という思春期あるあるを真正面から描いていく。付き合い始めるのはゴールじゃない、むしろスタートだと言わんばかりに正反対な二人が少しずつ距離を縮めていく様子を見守っていくのがこの漫画の醍醐味。そしてそんな一組のカップルに触発されてソワソワしだす同級生ズがめちゃくちゃ青春〜〜〜!!なんですよね。読みましょう。

 

惰性67パーセント

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 これはラブコメ……うーんラブコメなのかな……。金はないが暇は腐るほど持て余して毎日のようにボロいアパートの一室にたむろしている美大生の男女4人、何も起こらないはずもなく……という、限界大学生の日常を描いた漫画(ポロリもあるよ!)。作者が成人向け漫画を描いている人なのでその手の描写力はお墨付きですが、この漫画のポイントはそこではなく、知識欲を満たすくらいしか役に立たない雑学知識、バカをやって痛い目を見る大学生、アダルトショップの戦利品、雑すぎる生活、深夜のラーメン、トーストで焼肉、闇鍋パーティ、廃墟AV撮影、刻一刻と迫ってくる課題、ポートフォリオの提出期限、そしていずれやってくるモラトリアムの終わり。ちょっとだけいい雰囲気になるけど、現状のぬるま湯のような温度が心地良すぎて進展しない男女関係が好きなら読みましょう。

この漫画は非モテトーク30%、人生に必要ない雑学30%、エロそうでエロくないエロ漫画展開30%、これはイケる……のか!?(イケるわけないだろ!)展開10%で構成されています

 

 

(終わりです)

『凍京NECRO SUICIDE MISSION』がサービス終了するので印象深いイベントを振り返る

 凍京NECROがサ終する。リアルタイムで遊んでいたソシャゲのサービス終了に立ち会うのは人生で二度目だ*1。途中ログボだけもらっていた時期もあるが、凍京NECROはかれこれ2年近くプレイし続けていたので割とショックを受けている。とはいっても始めたころにお布施感覚で課金した程度で、ユーザーとしては渋い客であったであろうから文句は言えまい。

 

タイトル画面でデカデカと「サービス終了のお知らせ」が表示されたときの悲しみ……

 

 今は6月末に迎える終焉への後悔をなくすため、サ終に伴う大盤振る舞いを素直に享受しセレクトチケットで手に入れられなかった星5キャラや溜めていたストーリーを一気に走り抜けたところだ*2。あとは未プレイのイベントをストーリーキーで開放したり未見の回想シーンを消化したりする作業が残っているが、後日デジタルアーカイブ版が配信されるようで一安心。サービス終了後はネット上に一切の痕跡も残らないソシャゲも多いと聞くので……。

 

これは野球イベント衣装の男の子キャラからバレンタインチョコをもらう図
本当です 信じて

 

 自分はニンジャスレイヤーとのコラボイベントで初めて知ったクチだったが、そのイベントの気合の入れように驚愕し、エキサイトした記憶はまだ新しい。よくもまあ、あんな癖の強い作品とコラボしたなあと思ったら、凍京NECROの方もだいぶ頭がおかしかったのでおあいこだったという。並行して遊んでいたメギド72も隣の芝に生えているグラブルFGOもなんかヤベー話ばっかり流れてくるので「ソシャゲのイベントライターはみんなラリッてるのか?」とつくづく思ったものである。

 ここでは、(個人的に)トンチキソシャゲ筆頭でもあった凍京NECROの過去の印象深いイベントを振り返っていこうと思う。

 

いろいろありました

 

「ニンジャスレイヤーコラボレーション 凍京NEO-SAITAMA」

 やはりこれを挙げないわけにはいくまい。コミカライズを除くとメディアミックス展開も何もない時に突然無から生えてきた*3恐ろしいコラボイベント。詳しい感想は以前noteで書いたので割愛するが、ライターが相当な重篤ニンジャヘッズであることに間違いはないシナリオの完成度で、フジキドと肩を並べるようにニトロプラスコンテンツが総力を挙げて巨悪ラオモト・カンと激しくバトルするクライマックスのサービス精神がすごい。

 

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 もう一度言うが、コミカライズを除くとメディアミックス展開も何もない時に突然無から生えてきたコラボイベントである。しかも物理書籍版のわらいなく=サンのデザイン準拠でCVはドラマCD・アニメイシヨンのキャストという、ニンジャスレイヤー側でもなかった組み合わせだったのだ。この手のコラボにあまり恵まれなかったニンジャスレイヤーだったが、ホーム画面にニンジャスレイヤー=サンやヤモトちゃんを常駐させられるソシャゲは凍京NECROだけ! しかもLive2Dでヌルヌル動くし喋る! それだけでオンリーワンの価値がある。あったのだ……。

 

コラボイベント内で最終話を完全再現するやつがあるか!

 

「TSA ~Tokyo Super Alligator~」

 凍京NECROにはワニ回がなんと3回もありVR世界で危険なワニ狩りゲームに興じるPart1、下水道で知性に目覚めたワニと接近遭遇するPart2、そして局所的な温暖化によって知性ワニが地上世界に進出するPart3がある。これはPart2だ。廃棄されたエナジードリンクがケミカル反応を起こし、優れた知性に目覚めたワニたちが望んだのは自分たちが静かに暮らすことのできる安寧の地であった……というB級映画感溢れる出だしから始まりながら、しっかりサイバーパンクをやるバランス感覚よ。

 

(;Д;)

 

「臨在歓喜天 伽藍王」

 煩悩を力に変え、凍京侵略を目論む巨悪を打ち砕け、伽藍王! から始まる、巨大ロボットとアホとエロでやりたい放題するR-18ギリギリを攻めた超問題作。端的に言ってヤバい。煩悩がエネルギー源なのでエネルギーチャージのためコックピット内はすごいことになってるしAVパロみたいな名前のチームがアッセンブルするし百合の間に男が挟まるが普通に3Pが始まったりする。よく全年齢版でこのシナリオ通ったな*4。煩悩が高まると手に持ったマニ車を回してしまう見た目清純中身むっつりなイベントヒロインが普通にヤバい。

 

 

 

どう見てもアホエロ漫画時空です本当にありがとうございました

 

「ベジタブれ! 発表、阿蛭生死者追跡事務所の健康診断! ~君はなぜ健康にならないのか?~」

 怪奇、野菜人間回! 凍京NECROはサイバーパンクなのでサイバネティクスやサイボーグ人間、自我に目覚めたAIに動物キメラ人間もいるし、当然植物遺伝子を人体に組み込んだベジ・ヒューマンも存在する(何それ?)。健康診断からどうして野菜人間に接続されるの? バカなの? 凍京NECROにはマッドサイエンティストがたくさん出てくるが、アルチンボルドの「四季」をモデル(というかほぼそのまんま)にしたマッドサイエンティストはかなり頭のネジがぶっ飛んでると思うし、最終的にハートウォーミングな着地をするのもすごい。いやでもどうかしてるよこれ。

 

可愛い女の子の皮を被った究極健康生命体を自称する狂人も仲間になる

 

「蘇海白狼流外伝 熱闘!!シルカちゃん」

 るろ剣Gガンダムスターウォーズなサウナをやるという、だいぶ正気を疑ったイベント。なんかこの頃はサウナブームもあってソシャゲ界隈でもサウナ回が流行っていた気がするが、光と闇のサ道(サ道って何?)が激突し、人が死ぬとかどうとかいう話をやったのは凍京NECROだけだろう。というかタイトルの外伝って何? と思ったらキャラクタープロフィールに全部書いてあった。

 

「暗殺サウナ道」「暗黒サウナ抗争」「復讐の裏サ道使い」「流サ人」
やめろやめろこれ以上脳を焼くな!!

 

「ワイズマンに花を」

 知性ワニ回があるならもちろん知性サル回もある。というかパーティメンバーにはインテリに目覚めた知性ゴリラもいる(なんで?)。一見胡乱なエピソードのようだが、どれだけ人並みの知能を得ようが人間社会からは忌避され、内に眠る野生の本能を押し殺し、自らのアイデンティティの在処に苦しむ知性サルと、そんな彼女と恋に落ちてしまった知性ゴリラの悲哀が迫真的に描かれ、さらに殺人が絡むサスペンス展開まで織り交ざってシナリオの完成度がめちゃくちゃ高い。知性サル回なのに……。*5

 

これでも他の男キャラに比べてイベント出演回数は多い知性ゴリラ……。

 

 他にも装甲悪鬼村正がどんな話か分からんままパンツと筋肉まみれで記憶汚染されたり、正月の餅が禁止されたり、悪の組織がバイトを資金源にしてたり、AV全裸監督とか秋元康(シュン・ゲンコウ)とかスレスレのネタもいっぱいあった。あと、排出率がかなり有情なので毎回のイベントでガチャを回せたりしてかなり楽しめたんだけど、戦闘面は全部オートで済ませてたし、結局ゴリッゴリに鍛えた武器を揃えて敵をブン殴るワンパターン戦法だったのでゲームとして面白いかどうかと言われると……うん、難しいよねソシャゲって。

 

最高に際どい元ネタだがこう見えて優秀なアイドルプロデューサーであり生粋の善人である

 

明らかに何らかの背後関係を感じるが当人は利益供与関係を否定するチンピラの図

 

胸の射出口にカチカチに固まったレンチンミルク弾を装填
(胸の射出口にカチカチに固まったレンチンミルク弾を装填???)

 

東京タワーのエッフェル塔
(東京タワーとエッフェル塔は何かにつけてめちゃくちゃにされるよね……)

 

 ガチャ産キャラはメインストーリーでは出番がなかったのは残念な点。まあトンチキ設定をわりかし真面目にやってる本編に持ち込まれても困るが……。レベルキャップが解放できても星4以下は基本的に星5の劣化にしかならなかったし、キャラクターを持て余し気味で活躍の機会がなかったのも勿体なかったなあ。

 

すんごい濃いキャラがどんどん加入してくるが、彼女たちの姿はメインストーリーでは影も形もない。悲しい。

 

 デジタルアーカイブ版を出してもらえるのは非常にありがたい……ありがたいが、問題はコラボキャラが収録されるのかどうか。ニンジャ組だけでもどうにか……ボイスは無理でも立ち絵モーションだけでも残してくれないものかと願いつつ、これまで存分に楽しませてくれた凍京NECROに感謝しながら筆を置こうと思う。

 

(終わりです)

*1:一度目はスクエニの「拡散性ミリオンアーサー」だった。アプリの方は終わっちゃったけど映像作品の「実在性ミリオンアーサー」は面白いよ。本当だよ。

*2:ストーリーの最後に「このゲームに出てくる女性キャラは全員成人済です!!!」ってクソデカい声で叫んで終わったので良かった。

*3:そもそも「ニンジャスレイヤー」はコラボ時点で既に代替わりしており、凍京NECROに登場したニンジャスレイヤー(フジキド・ケンジ)は現在サツバツナイトを名乗っている。

*4:「流石にえっちすぎるのでは?」と訝しんで調べたらマジでR-18版があることを知ったのもこの頃だった。凍京NECROはえっちなゲームです。

*5:知性ゴリラも知性ゴリラで別のイベントでドMに目覚めたり食材にされかかったりして出番的にかなりおいしいポジションにあった。知性ゴリラなのに……。

『真・女神転生V』クリア後感想

 去年発売された真・女神転生V』を4周して全ルートクリア、隠しボスとDLCの人修羅撃破までやったのでネタバレありで感想を書いていきます。

 

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 始めに言っておくと、申し訳ないんですが真・女神転生V』は俺のためのゲームでした。アトラスさんありがとうございます。いや~~~めちゃくちゃ面白かったです。発表から4年くらいだったかな?その間待ち望んでいた……というほどではなかったけど、始めてからやめ時がつかず年末までずっとやってた気がする。途中で『急性アトラスゲーめっちゃやりて~発作』*1がきて真ⅢとP5Rを起動したのも真Ⅴのせいです*2。年末年始はアトラス三昧でした。

 

メガテン史上最広なフィールド『ダアト』

 初めてダアトに降り立った時の衝撃は「これが新世代のメガテン……!」と打ち震えるほど大きく、一面の砂漠に倒壊した高層ビル、フィールドには闊歩する悪魔たち、見上げれば途中で朽ちたような歪な塔が大地から生え、不気味な銀の球体が幾つも空に浮かび、石化したと悪魔が乱雑に転がっている港区にテンションが爆上がり。マップを隅から隅まで徹底的に踏破するためにマガツカを潰し、シュババと走ってピョンピョン飛んで……をやるだけで楽しい*3

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あの東京タワーまでマップが地続きだったのは「すげえ!」となった

 やっぱりメガテンの東京は滅びてナンボみたいなところがあるけど、今作はその滅んで半分砂漠に飲まれかけてる東京を歩けるのがめちゃくちゃいいんですよね……。そもそも私は文明が滅んで残骸しかなくなったポストアポカリプス光景というものが大好きで、人間社会のしがらみから解放されたここでしか味わえない開放感があるんですよ。わずかに残った人工物の残滓を見ると「おっかろうじて原型保ってるな~頑張ってるな~」みたいな感情が湧いてくる。ガッツリ残響ギターを効かせてくるフィールドBGMも雰囲気にすごくマッチしてます。

 やってることは劣化オープンワールドなんだけど*4、スタミナ管理が必要なくいつでもセーブポイントに帰れるトライ&エラーの手軽さがストレスを感じないつくりなのが良かった。シンボルエンカウント制なのも戦いたくないときはスッと避けて通ったりできるのもよく、何より悪魔がうろついている景色は大変味があってグッド*5

 

ユーザビリティに特化したUI、そして油断できないバトル

 メニュー画面や戦闘場面のUIの第一印象は地味だな……でした*6。SJのクールなSEや真Ⅳの独特な丸っこいフォントやアプリメニューのような*7、際立った特徴がないのは寂しいことは寂しいけど、それを補って余りある快適な操作性は手放し難い。

具体的に言うと、

悪魔合体の逆引き検索

・ダアト間の移動を除くとロードがほぼ皆無

・戦闘中でも敵味方ステータスステータスが確認可能

・回帰のピラーでどこでもセーブポイントに帰還できる

 辺りかな。というか真Ⅴの便利=真Ⅲの不便だったポイントみたいなところがある*8。それから写し身*9と魔導書*10も育成のしやすさに寄与していて、レベル上げとスキル構成のハードルはかなり低いです。

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スタメンが女性悪魔に片寄ってしまうというメガテンあるあるの一例

 ただ、やっぱり感じてしまうのは悪魔の数の少なさ。日めくり悪魔で確認すると全214体で、前作となる真ⅣFが400体を越えていたのを考えるとおおよそ半分。その内訳としてはP5に登場した悪魔+真4F・DSJ初登場悪魔+今作の新規悪魔といった塩梅なので物足りないといえば物足りない。この辺は3Dモデルの事情もあるから仕方のない。メガテンも早くポケモンに並ぶ覇権コンテンツになって全悪魔3Dモデル化してくれ……頼む……。

 戦闘については序盤は苛烈に、中盤以降はなだらかに推移する難易度でボス戦と新しいダアトに着いた直後の雑魚戦の緊張感は格別。特にボス戦は「シンプルに強い」だけで初見殺しな部分もあり、全滅しつつ弱点を発見→再戦がデフォになってた*11ただ最終的に属性貫通系や確定クリティカルのスキルが充実してくるので終盤の難易度はヌルめ。どうもレベル差によってダメージ量も調整が入るようで、レベルカンストするとストーリーボスは皆楽勝に倒せてしまうので周回バトルは結構作業感ある*12

 隠しボスのシヴァやDLCの人修羅はアトラスお馴染みのロジックボスなのでガチガチの編成でも30分~1時間の長丁場になるのでマジで大変だった。ターンダヴァを毎ターン繰り出してきたりターン計算ミスって地母の晩餐喰らったりしてパーティ全壊したのにどうやって形勢立て直して勝ったのか全然わからん*13

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花見画面



 

メガテン最先端を走る、事象の先を行くストーリー(ただしめちゃくちゃ薄い)

 色んな所で「ストーリーは薄い」と言われているのでわざわざ言及するのもアレかなと思ったんですけど、ちょうど周回途中で真Ⅲをクリアして1本分のゲームの厚みを得られたので*14、そのあっさり感は残念ではあれど不満はありません。ペルソナライクに紹介された登場人物が中盤~終盤にかけて無慈悲に退場していくのを見ると、真Ⅲのドライで突き放すような殺伐さに話を振ったほうが良かった感じがするな*15

 今作は秩序、多様性、座の破壊の3通りにエンディングが分岐するんですけど、これは従来のLOW-NEUTRAL-CHAOSの分岐とは似て非なるもので、まず今作は今回は神が斃れた後の創世の話だから「秩序」も従来とは異なる秩序を起こすことになるのを思えば変革だし、既に世界が混沌に堕ちているので「多様性」も数多の神々を立てるによる新たな秩序と言える。そして前者2つはあくまで神が主で人が従で、人間と神(悪魔)が対等になるのは座の破壊ルートだけなんですよね。ただこれも隠しエンドに入らなければかなりBADな終わり方で後味が悪い*16

 なので「唯一神による絶対的な秩序」を「もっとも強大な者が世界を支配する」と解釈するのはなるほどと思ったし、真Ⅲの唯一神のいないボルテクス界でLOW勢力の天使たちがヨスガのコトワリに賛同したことと、秩序側に就いた太宰イチロウが唯一の正解を求めて力を欲する展開は符号が一致してるみたいで面白かった*17。それに引き換え多様性世界の説得力の無さよ*18。この辺は本当に惜しい。

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これだけで「メガテンやってきて本当によかった……」という感慨深さのあるビジュアル

 過去作のカグツチやYHVHに続いて『事象』という概念との戦いとなった今作の真エンドはこれもまた抽象的でスケールの大きい話で、「クリアしたぞ~!」というゲーム的達成感は皆無。皆無なんだけど終わった後でじわじわと腹が据わってくる感覚があり、やっぱこのゲームでしか味わえない感情が生まれてくる。メガテンの悪魔で神話や伝説、宗教を学び「人とは……世界とは……生きるということとは……」とウンウン悩んでいた中二ボーイの身だった者としては前人(神)未到の神魔滅殺マンダラ解脱エンドは非常にゾクゾクする話でした*19

 

ナホビノくんのアイコニックで両性併せ持った耽美なデザイン

 真Ⅴの最大の功績かつ功罪はこれです。いやマジで。

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この腰に手を当てた時に生まれる『曲線』がね……分かりますか? はい、分かります

 まつ毛の長い面立ちからして美少年偏差値がヤバいんですが、ナホビノになったときに分かる思ったよりも男らしい体つきで更にヤバい。いいですか、ただでさえ何者も寄せ付けないミステリアスな雰囲気なのに、ナホビノになったら「少女のような面立ち」「少年のようなしなやかな体つき」ですよ。分かりますかこの破壊力の高さ。ムービーシーンで一言も喋らなくても最高の撮れ高を叩きだせる容貌の良さで*20、流れる川のように揺らめく長髪もめちゃくちゃポイントが高い*21。正直「この子がプレイヤーの分身です!」って言われても感情移入出来ませんよ。私はこんなにも美しい……いや形容するのもおこがましい……少年を操るなんて罪深いことを……申し訳ございません……本当にありがとうございます……。

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重要文化財として申請して末代まで語り継ぐべき

 正直いくらシリーズファンでもキャラクターの顔の良さ一点突破で「神ゲーです!」とは口が裂けても言いたくないんですけどナホビノくんは正真正銘の神なので言います。真・女神転生Ⅴ』は神ゲーです。言いました、これで許してください……お願いします……アトラスの皆さん、本当にありがとうございます……。

 

未来へ

 真エンドの不穏な空気からすると真Ⅵを出す前に追加のDLCや続編も十分考えられそうなんですよね。ストーリーも端折られたところが多そうですし、もっとこのダアトを走り回っていたいという気持ちもあるのでぜひアトラスにはもう少し真Ⅴの世界を広げてみせてほしい。ナホビノくんはこんなところで終わる人(神)材ではないです。それが真Ⅳ→真ⅣFのような数年越しになるとしても私としては待つ価値は十分にあります。重ねて申し上げると真・女神転生V』は俺のためのゲームなので……。アトラスさん本当にありがとうございます……そしてコンゴトモヨロシクお願いいたします……。

 

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EVERYONE SAY THANK YOU ATLUS

 

(終わりです)

 

*1:アトラスゲーが面白過ぎてまだ途中なのに積んでいたアトラスゲーを消化しにかかる発作のこと。持病。

*2:久々に「カモシダ、クソすぎる……」という気持を味わってもSwitchを起動すればすぐに東京を滅ぼせる。良い時代になったものだ。

*3:3Dゲームってめっちゃ広いフィールドでカメラをグリグリ回しながらジャンプとダッシュができるだけでめちゃくちゃ楽しいよね?そういうことです。

*4:無意味に高いところ登ってパラセールしてえ~って何百回も思った。みんな思うでしょ?

*5:群生しているナルキッソスとか。ナルキッソスって群生するんだ……。

*6:ペルソナ5の革新的なUIを経験した後だとあらゆるRPGで起こる現象なので真Ⅴが悪いわけではない。実際に始めて見ると全然気にならないし。

*7:あれはあれでかなり好きだったので真ⅣFで変わってしまったのはちょっと残念だった。

*8:アプデ前のスキル抽選〇×ゲームは本当にキツかったです。

*9:悪魔ごとに1個しか持てず2週目以降だとダブることが多いので軽率に使うのが良い。

*10:DLCの御霊なしでも拾ったりクエスト報酬でもらったりして結構手に入る。

*11:真Ⅲだと全滅するとフランダースの犬みたく天使のお迎えが来るけど真Ⅴだと花見をする羽目になる。何?花見って……。

*12:蜘蛛の子を散らすように逃げる悪魔を追いながら「おうおう道開けやこちとらナホビノやっとるんやぞ~!」とイキリ散らすのは楽しい。

*13:アナンタは最優先で潰せ。ディアラハンは絶対に使わせるな。

*14:真Ⅴ3周→真Ⅲ先生エンド・悪魔エンド→真Ⅴ真エンドの順番でクリアしました。真Ⅲ必修科目じゃんこのゲーム。

*15:この後積んでたペルソナ5ロイヤル(無印はクリア済)も始めたんですが、チュートリアルやらアニメやらが終わって自由行動できるまで10時間近くかかっててめちゃくちゃビビった。

*16:王座を破壊して薄っすら笑みを浮かべながら下界を見下ろすナホビノくんが見れるのはこのルートだけ!

*17:アブディエル様は良いキャラしてましたね。メガテンの天使にあるまじき善性。イチロウならずとも応援して堕天させたい。

*18:終盤の話だと越水長官も本物の神ではなく神造魔人だったような匂わせがあり、多様性と口では言いながらも「天津神が世界を征するぜ~」と言わんばかり態度も何か裏があったのかも知れませんね。マガツヒとなって散っていった今では何も分かりませんが……。

*19:「そんなことしたら大宇宙の意思が黙っちゃいないぜ~!」という台詞が未回収のままなので、続編や追加DLCがあるとしたらこの辺を掘り下げるのだろうか。

*20:座の破壊エンドの数十秒かけて舐めるようにナホビノくんの周りをグルッとカメラが一周するムービーで思わず声が出る。出た。

*21:髪の動きには「Kawaii Physics」という疑似プラグインを使用しているらしい。かわいいね!

漫画「僕の心のヤバイやつ」にずっと情緒を蹂躙されている

 いよいよもって死のカウントダウンが近づきつつある。これまで数え切れないほど死線を潜りく抜けてきたけど今度こそもうダメだ。死ぬ。今まさにフェイタリティを決められる寸前の段階まできている。

 つまり、漫画「僕の心のヤバイやつ」がついにひとつのクライマックスを迎えている話です。

 

 

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不器用な両片思いから不器用な両想いへ

「えっまだ付き合ってなかったの!?」「もうほとんど両想いじゃん」という方々もいるかもしれないが、違うのだ。"まだ"両片思いなのだ*1。くっつくかくっつかないの一番美味しい距離感で永遠のモラトリアムを謳歌するのはラブコメの定石であるが、ついに僕ヤバはそこから踏み出した。

 ついにバレンタインが来たのだ。人生で一度しか訪れない中学二年生のバレンタインが。

 女子中学生が意中の男子にチョコを渡すか渡さないかモジモジしているだけで剣豪の立ち合いのような緊迫した雰囲気になり、物見の見物に来た野次馬はただならぬ剣気にあてられて失禁気絶する……これはマジでそういうやつだ。初恋という状況。チョコという凶器。十年そこそこの人生経験ありったけを賭した一世一代のバレンタイン。

 チロルチョコ将棋、チョコまんという小細工を張り巡らせ*2、犬の散歩を理由に当日の夜にお忍び訪問し、ギャンブルと称して苦いコーヒーを飲ませ、勇気を振り絞って渡したチョコすら自分ではんぶんこして一緒に食べてしまわなければ思いを伝えられず「全部うまく出来なかった」と泣いてしまうヒロインを見たら「もう付き合っちゃえよ」とか「抱けーっ!!」とか言えないんですよ。中学生なんですよ。初恋なんですよ。彼女ら。

 こうやって読者である我々は一喜一憂しながら市川と山田の言動を振り返ることはできても、当の本人たちにはそんな余裕はないじゃないですか。「昨日あんなこと言ったのキモかったか……?」って夜も眠れず悶々としていても、次の日に嫌が上でも山田と顔を合わせなきゃいけない市川がいるわけですよ。毎日が戦場で毎日が一日も無駄にできない機会なんですよ彼らにとっちゃあ。それに比べて俺たちはどうだ?2週間に1回ごときの更新だけでいっぱしの先輩気取ってて情けなくないのか?ちゃんと家族と話をしているのか?人生と向き合って生きてるのか?

……すいません、取り乱しました。本筋に戻ろう。

 ともかく、「これは絶対いけるだろ!」と読者が思おうとも、市川は尻込みするし山田は自信が持てない。いける筈と思っても実際目の前にすると全然気持ちが追いついてこなくて「いける」「いけない」が頭の中で衝突してぐちゃぐちゃになってしまうやつ。それが恋なのだ。心の中のヤバイやつなのだ。

 

ささやかな心の揺れ動き、その破壊力について

 この漫画は陰キャ男子と陽キャ女子のラブコメという看板を掲げているけど、その看板の下には日々更新され続ける中学生の情緒が一面に広がっていて、針の穴を通すような繊細な感情に絡めとられたらもう二度と抜け出せない底なし沼なんですよね*3

 特に最近は市川←山田の矢印の大きさが本当にヤバくて、こいついっつもふにゃふにゃしてるし何か食べてるしモデル以外長続きしないし字汚いしで完璧には程遠い女なんですよ。じゃあ容姿だけの張りぼてなのかというと全然違くて、自分がみんなからすごく大事にされている、恵まれた境遇にあることを十分理解していて、だからこそ「本当は迷惑をかけていて大切な人にも嫌われるんじゃないか」と不安を感じているただの女の子なんですよ*4。ちゃんと周りのことも見ていて、市川の優しさの裏側まで気にしてしまう相手への思いやりゆえの、ちょっとした、でも看過できない心のささくれが気になってしまう繊細な心の持ち主。

 これが高校生ではなく中学生というのがポイントで、精神的な面だけではなく身体的にも子どもから大人になる過程だからこそ描ける物語が僕ヤバで、「大人になれば今のような関係は終わってしまうかもしれない」という市川の恐れに対して山田が「大人になったことによる関係の変化」をむしろ楽しみにしていることを言葉にして伝える。そういった気づきの連鎖の上に市川と山田の関係は成立している。より深く向き合い、前を向いて、お互いに手を取り合って進んでいく。

 彼らは今まさに目まぐるしく成長し続けている段階で、そこに端を発する不安や思いを共有するというのは、ただ好意を持つこと以上にお互いの人生をひけらかす共犯者のような唯一無二の関係を築くということ。それはもう付き合うよりも難しい関係だし、大人でもそんな境地にまで至れるペアはそうそういない。というか「付き合ってる/付き合ってない」なんて表現じゃもう市川と山田の関係は表しきれないので新しい言葉が必要じゃないですか。「死がふたりを分かつまで*5とかどうです?もう結婚じゃん*6

 

心のヤバイやつが迫ってくる

 もう自作の暗黒中二病小説を執筆する市川京太郎はおらず、齢一五歳にして人生を分かつ相手を見出したピュアピュアな少年しかいないのだ。「僕は山田と付き合いたい*7」って口に出して言ったらもうそれは言霊なんですよ。2人が交わした会話の一つ一つがお互いを強固に結びつけるまじないであり、呪いでもある*8

「変化を恐れるタイプだね」とかつて山田に言われたことも今は昔。市川にとって、現状の山田との距離感でも十分居心地が良いのは伝わってくる。だけどその先を望むなら? もしかしたら、自転車2人乗りで一緒に下校ができる関係ではなくなってしまうかもしれない。そんな可能性があっても関係の変化を望むかどうか、その動静のピークが間違いなくこのバレンタイン回。

 人生最大瞬間恋焦がれる気持ちを記録した二人の世界を邪魔しないように、私にできるのは息を止め言葉を捨て感情を押し殺すことだけだ。怪獣に蹴り飛ばされる車のように、圧倒的な中学生情緒を前にできることは何もない。既に眼前に死が迫ってきている。こんなにも大きくて恐ろしい、心のヤバイやつが*9

 

 

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(終わりです)

 

 

 

*1:両者が完全に間合いを見計らっている段階に来ているというのに、ギリギリのラインでゴールインしないので読者は糖蜜責め(口の中にゲロ甘エッセンスを流し込まれる新手の拷問)を受けているに等しい。

*2:スピンオフ展開が本編に合流する流れが嫌いな人間は地球上に存在しない。

*3:読者は市川に合わせて自然と目線も年齢も下がっていくため感性まで中学生時代まで戻ってしまうんだね。

*4:ちょっとここの掘り下げがマジですごくて僕ヤバは市川と山田のダブルヒロイン漫画になった。いや、市川はもともと読者のヒロインですが……。

*5:この漫画が市川の「僕が今最も殺したい女だ」という物騒な心情描写から始まった物語であることを考えるとやっぱ「共犯」とか「死」みたいなワードを使いたくなるんですよね……。

*6:「もう(酸いも甘いも嚙み分けてきた)結婚(済の夫婦みたいなもん)じゃん」の意味。

*7:俺はここでのたうち回り、一度死んだ。

*8:自身の在り方を不可逆的に変化させるという点において恋とは呪いである。

*9:と言いつつこの後も既にツイヤバの方でいくつも予言が来ているので本当に恐ろしい。クリスマス回とか。海回とか。

手記:おれにとって『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』とはいったい何だったのか

 あれからどれほど時が経っただろうか。アメリカ大統領がトランプに代わり、上野動物園ではパンダの赤ちゃんが生まれ、北朝鮮は核開発を中止するとかしないとか言っていたあたりまでは覚えているが、この地下シェルターに潜って以来、外界とは隔絶されてしまった。こうして一人でいると、どうしても脳裏に焼き付いたあのことを思い出してしまう。あの、おれの中の全てが変わってしまったあのことを。だが、目を背け続けることはできない。おれは後世に伝えなければならない。それが偶然あの場に居合わせてしまったおれの使命であり、呪いだからだ。おれは書き残さなければならない。おれの目の前に現れた、【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン*1のことを。

 

本記事は2018年4月にnoteにて掲載した記事を加筆・修正したものです。

 

第一幕:予感

ニンジャの夜明け

 【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】を語るには、まず【ニンジャスレイヤー】*2について話さなければならない。【ニンジャスレイヤー】……それは【サキブレ】*3とともにおれたちの前に現れる、この氷に閉ざされた時代を明るく照らす太陽だった。【サキブレ】を一目見た子供たちは我先にと外に飛び出し、はしゃいでいたものだ。おれもその中にいたガキのひとりだった。

 おれは仲間のうちでは特に【ニンジャスレイヤー】に詳しかった。連載を追うことはもちろん、【物理書籍】*4や【無印】*5、【グラマラス・キラーズ】*6、【キルズ】*7の漫画を買い集め、【オーディオドラマ】*8も全て聞きこむほどの熱の入りようだった。あの頃は見るものすべてが新鮮で、素晴らしい日々だった……。

 

ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』の発見

 【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】が観測されたのはそんな折だった。既にコミカライズ、オーディオドラマの成功を確信していたおれは、【ニンジャスレイヤー】待望の映像化に胸を躍らせた。『フロムアニメイシヨン』のタイトルが一体どういう意味を持つのか、このときのおれは考えもしなかった。

 それは2014年7月、ロサンゼルスで開催された【Anime Expo】*9で世界最速発表された。ポスタービジュアルを手掛けたのは【岡崎能士】*10氏。その後、各地で展開されたイベントでは【1/1スケール可動式ニンジャスレイヤー人間】*11の存在が確認された。その後の続報でメインテーマが【BOOM BOOM SATELLITES*12の【BACK IN BLACK】*13、制作が【TRIGGER】*14であることが判明した。

 この後もキャスト発表、ネット先行配信などの情報発表を挟み、着実に【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】の接近が観測された。当然この間も【サキブレ】は変わらず観測され、厳しい冬の時代の終焉を予感させた。おれたちは期待に胸を膨らませていた。

 

第二幕:接触

ファーストコンタクト

 【2015年4月16日(木)23時】*15。おれの人生で忘れもしない日になることだろう。それはおれの目の前に姿を現した。それはおれの思い描いていたものとはかけ離れた姿をしていた。

 おれは頭が真っ白になった。これはなんだ?何が起きている?目の前で繰り広げられているこの寸劇は何を意味している?おれはあたまがばくはつし、パニックじょうたいとなった。

 おかしい。おれがおもいえがいていたえいぞうばん【ニンジャスレイヤー】は、【ア・カインド・オブ・サツバツナイト】*16の【レオパルド】*17のいちにんしょうしてんでしんこうする、さいこうにクールなものだったはずだ。なにかがおかしい。

 嵐のような時が過ぎ去った。とにかく、おかしい。皆、何をすべきかもわからず、ただ立ち尽くしていた。果たしてだれかが側にいただろうか?その記憶さえもあいまいだ。

 気が付くとみなが総崩れとなっていた。「逃げろ!はやく、逃げろ!」走りながら、誰かが振り返り、叫んだ。折り重なって倒れる者。ハンドガンを咥えて座り込む者。

「い、行かないと」おれは呻いた。「行かないと!」叫んだ。周囲の連中がおれをショック症状を起こしたダメ新兵を見る目で見た。違うんだよ!おれは苛立ち、目で睨み返した。「わかるやつ、いないのかよ!おれたちは呼ばれているんだぞ?あんな……大きくて、強い、凄まじいものなのに!」

 おれは【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】の【2周目】*18に突入した。

 そう、おれは【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】に再度接触を試みたのだ。しかし、一度目の接触では、まだやつはその本性を現したわけではなかった……おれはやつの恐ろしさの鱗片にしか触れていなかったのだ……。

 

第三幕:分析

その生態について

 その後どうなったか?そのことを書く前に伝えなければならないことがある。やつの、【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】の生態についてだ。

 【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】とはなにか?それは【ニンジャスレイヤー】のメディアミックス作品で、映像作品である。そしてアニメーションとは似て非なる、名状しがたい何かだ。より具体的に呼称するなら、それは【FLASHアニメ】*19に近い。

 OPを終えておれの目の前に現れたのは、横滑りでスライド移動してきた【オフェンダー*20=サンと、【スキャッター】*21=サンのどアップで文字色がダブって読みにくい【ボーン・イン・レッド・ブラック】*22のタイトルだった。

 おれは制作が【TRIGGER】だと聞いた段階で秘密裏に調査を開始し、【インフェルノコップ】*23の情報をキャッチしていた。それだけが、たったそれだけのことがおれの生死の分けた。やつは……いや、『やつら』は内心ほくそえんでいたに違いない。『やつら』にとっておれたちはまさしく野ウサギのように見えていたことだろう。

『やつら』……そう、【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】は一体だけではない。やつらは連携しておれたちに襲い掛かった。初めに姿を現した時はやつしかいなかった……。あれだけの被害を受けながら、それでもなおおれたちは油断していたのだ。

 

『やつら』の正体

 【ニンジャスレイヤー】本編が【サキブレ】に導かれてやってくるように、【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】もまた、姿を現す前にある兆候を見せた。まず初めに先遣隊のように現れるのが【タイムシフターケイン】*24だ。その次は【ニンジャスレイヤー フロムラジオステイシヨン】*25、もしくは【ニンジャスレイヤー フロムネットテレビジヨン】*26。その後、【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】が姿を表す。しかしやつの出現で全てが終わった訳では無い。本当の恐怖はその後やってくる。

 それが【ザ・TVショウ】*27と呼ばれるものだ。

 【ザ・TVショウ】とは?それは『深夜音楽番組アトモスフィアの無国籍バラエティー番組』を自称する恐るべき化け物で、【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】の襲来で重篤な被害を受け、無防備となっていたおれたちに完璧な不意打ちを仕掛けてきた。やつは別名【実在性ニンジャスレイヤー】*28とも称された。【スシ物語】*29、【ニンジャガールズ】*30、【ニンジャマジック】*31、【ヒドゥンニンジャ】*32、【チャバネ ザ チンピラ】*33……やつらはそのうちのたった一つだけで100人は殺す。

 ……これが【2周目】に突入したおれを出迎えたものの全貌だ。【ティピカルニンジャヘッズ】*34、【コケシマートマン】*35、【ニンジャスレイヤーショッピング】*36……おれは最悪の未来を予期して十分備えたつもりだった。だが、やつらはそれをあざ笑うかのように、想像を軽々と越えてきたのだ。おれたちはあっという間に散り散りになり、一人、また一人とその毒牙にかかっていった……。

 

第四幕:終局

 もはや、生き残ったのはおれだけになってしまった。今のおれの手元には【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】の【円盤】*37や【デイ・オブ・ザ・ロブスター・トリロジー*38などのアーティファクトがあるが、それが一体何の役に立つだろうか?【円盤】には【ザ・TVショウ】は収録されていない。やつは今でも電子の海に潜んでいるだろう。そしておれが外界との接触が恋しくなり、モニターに向き合うその瞬間を今か今かと待っているはずだ。

 外ではどうなっているだろうか?今でも夜空に【サキブレ】が輝いているのだろうか?【TRPG*39の噂は本当なのだろうか?あの幻の【第4部】*40が始まっているのだろうか?だがおれにそれを確かめる手段はない。その好奇心がおれを殺す。やつもそれをわかっているはずだ。だからおれはこの地下シェルターで息を潜めている。ここにいれば、あの非常連絡用の端末に近づかない限りは、おれの身の安全は保障される。

 心配することはない。ここには食料も娯楽も十分にある。わざわざ『やつら』のことをこれ以上思い返す必要はない。おれはあの恐怖から解き放たれて自由になったのだから。

 だが、ほんの少しの絶望への可能性に備えてこの記録を残すことにする。この世界におれが存在したという証明を残すために。

 

 

荒廃した部屋は床一面に書類やファイルが散乱しており、ずいぶん前から誰もいないようだ。机の上には、【ニンジャスレイヤープラス】*41と書かれた走り書きのメモと、ノイズが走っている非常端末のモニターが残されている……。

 

 

ニンジャスレイヤープラスへのリンクはこちら

 

diehardtales.com

 

 元記事はこちら

 

note.com

 

 

(終わりです)

 

*1:ニンジャスレイヤーと何かしら関係があるとされる、謎の映像作品。FLASHアニメーション、画面比率4:3、モノラル音源、毎週変わるED曲など、数々の挑戦的な工夫を凝らした『ニンジャスレイヤー』のメディアミックス作品。放送時は物議を醸したが、おれは今でも大好きだよ。

*2:言わずと知れたサイバーパンクニンジャ活劇小説。執筆者の人生を狂わせた原初の火。

*3:明けの明星。タイムラインにサキブレが現れるとき、近いうちにニンジャスレイヤーの連載が始まる。近年では◆カラテの高まりを感じる◆のシグナルも観測されるようになった。

*4:ニンジャスレイヤー本編を収録した、文字通り物理世界に存在する書籍。一冊だけでも胸に忍ばせておけば凶弾から身を守れる圧倒的ボリュームを誇る。

*5:余湖裕輝=センセイ・田畑由秋=センセイによる、ニンジャスレイヤーコミカライズ作品。アーソン=サンが圧倒的強キャラとしてリファインされたニンジャ・エンターテイメントの金字塔。コンプティーク誌で連載されていたが、チャンピオンREDに移籍連載中。移籍に際して、両社の間にニンジャやスリケンが飛び交ったという噂があるが、不用意に歴史の闇に触れるのは得策では無いと申し上げておこう。

*6:コミカライズ第2弾。作者はさおとめあげは=センセイ。突然の連載発表とキャッチコピーの「グッドルッキングなニンジャとニンジャの顔が近い!」は完全にアンブッシュを決めたかたちとなり、各所に深刻なニューロン損傷を起こした。バイセクター=サンがチョーカッコいい。

*7:関根光太郎=センセイによるコミカライズ第3弾。再解釈・再構成されたニンジャ、エピソードの数々は逸品で、エッジのきいた描写に雄たけびをあげる者や、数々のニンジャガジェットにむせかえる者、美しい扉絵に恍惚の表情を浮かべる者も現れ、大きな反響を呼んだ。ニンジャスレイヤーの誕生からダークニンジャ襲撃までの無限ループの円環を完成させ、全5巻にて完結した。

*8:聴くニンジャスレイヤー。あの数々のトンチキな描写がゴブリン=サンに読み上げられ、耳に息がかかる距離でニンジャが殺し合う、圧倒的なネオサイタマを体感できる体感型アトラクション。冗談や比喩ではなく体温が上昇する超絶クオリティ。

*9:Anime Expo 2018で公開された『ニンジャバットマン』のトレーラーがカッコよすぎて吐きそう(既に公開済)。

*10:サイバーパンクハードゴアウエスタンサムライ漫画『アフロサムライ』の作者。想像よりも1レイヤー上のアグレッシヴな作品なので心臓が弱い方は注意。

*11:イベントブースにてたびたびPOPしていたニンジャスレイヤーとは似て非なる存在。1号から4号が稼働していたらしい。

*12:ハードロックとサイバーテクノを兼ね備えた最高のロックユニット。『EXPOSED』『EMBRACE』『SHINE LIKE A BILLION SUNS』は名盤オブ名盤。2016年10月にメンバーの川島道行氏が脳腫瘍のため逝去し、バンド活動の幕を閉じた。

*13:ドラムスティックを打ち鳴らせ。

*14:あの『キルラキル』を生み出したアニメ制作会社。制作会社違うけど『天元突破グレンラガン』、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』もマジ面白いので3つとも観るべき。

*15:黙示録の日。

*16:ハックアンドスラッシュを生業としていたケチなチンピラが、ニンジャとなり、驕り、堕落し、井の中の蛙であることを思い知らされ、死神に追われ、闇に抱かれその生涯を終えるまでの話。オールタイムベスト。

*17:この世界の王になれなかった常人の3倍の脚力ニンジャ。トイの外見は、バンディットを素体にクローを足しただけという挑発的な内容であった。

*18:地獄にようこそ。

*19:FLASHアニメは主要なメディアミックスとしてはありえない。そう思っていた時期がありました。

*20:ニンジャスレイヤー=サンに惨たらしく殺される、皮を剥ぐのが好きな方。

*21:ニンジャスレイヤー=サンに惨たらしく殺される、ひどいザマになるのが見たい方。

*22:どんなヒーローにもオリジンとなるエピソードが存在し、そしてこのボーン・イン・レッド・ブラックもまた、ニンジャスレイヤーが血と闇から誕生する瞬間を描いたものだ。

*23:TRIGGERの暗黒面が生んだアニメのような何か。ほとんど観る劇薬。過去にインフェルノコップ一挙放送という狂気じみた所業が存在した。

*24:アニメイシヨンのタイムシフト告知番組。シフトエネルギーを悪用せんとする邪悪な連中と戦うタイムシフターケインの活躍が描かれる。放送終了後に後番組である『忍者スレイヤー』とのVS劇場版『忍者スレイヤーVSタイムシフターケイン ~反滅のマキモジュール~』が公開された。

*25:ニンジャスレイヤー役の森川智之=サンをパーソナリティに、ニンジャ役声優をゲストに迎えたラジオ番組。好きなスシネタの話題で盛り上がったり、投稿者オリジナルニンジャをニンジャスレイヤー=サンが惨たらしく爆発四散させたりするタノシイ企画満載。

*26:ニンジャスレイヤー物理書籍や漫画、グッズ、アニメイシヨンDVD/BDの宣伝を行うネット番組。スタジオ内にティピカルニンジャヘッズやコケシマートマンがたびたび出没し、ともすればバラエティーの暗黒面に陥りがちな番組に緊張感を与える。

*27:『フロムアニメイシヨン』本編後に続けざまに放送された、音楽番組めいたなんか。ED曲担当のアーティストをゲストに、曲の話やライブの話、ニンジャの話をする。EDはどの曲もマジで最高オブ最高で、ED曲が収録された『ニンジャスレイヤー フロムコンピレイシヨン』はオールマストな名盤。

*28:『選ばれた者は100万人にも及んだ』『王のUSTUWA』などの迷言を生み、局所的に熱烈なファンを生んだテレビ番組『実在性ミリオンアーサー』をもじったもの。想像の斜め上のメディアミックスやスカムミニコーナーの存在あたりがアニメイシヨンとの共通点。……共通点?

*29:コクエーホーソ番組。この番組のキラーコンテンツ。生簀の魚を吹き替えする狂気のコーナーで、重厚な三味線オープニングに圧倒的なゼンを感じる。

*30:スカムセクシーコーナーめいたなんか。親の前で不意に雑誌グラビアを開いてしまった時のような、気まずい空気を生み出す。豊満派も平坦派も満足できる内容。

*31:ニンジャがマジックするどころではない、網膜に焼き付くほどの極彩色を視聴者にお届けする。良い子は見てはいけない。

*32:背景に溶け込んだニンジャを探し出せ。番組の途中で突然ミッションが下る無慈悲な内容。制限時間付きで思ったより難易度が高い。

*33:例の黒いアレがカラテのとっくんとかをする発想がヤバいコーナー。この企画通したやつ誰だ。

*34:ただならぬカラテをみなぎらせたニンジャグッズ着用モデルの人。もし道ですれ違ったらおれはそっと目を反らすだろう。

*35:ティピカルニンジャヘッズのサイドキック……と見せかけ真の首謀者は彼かもしれない。コケシマートのバッグを頭から被り、その真意は窺い知れない。

*36:オーディオドラマ発の『ニンジャスレイヤー オリジナルサウンドトラック』のライブ、『ニンジャサウンド・ギターサンダーボルト』中に突如放送された電子ドラッグ。実質エンドレスエイト。ネット中継で視聴していた者のニューロンを焦土へと変えた。

*37:ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』のDVD/BDのこと。何故か食玩キットのような外見をしており、長時間放置したテープの日焼け跡や箱のしわよれ具合を再現したマニアックな外装をしている。

*38:『フロムアニメイシヨン』2巻の特典で付属していたあの問題作『デイ・オブ・ザ・ロブスター』3部作を収録した冊子。過去にはその読書感想文を自由研究課題として提出する企画が存在した。狂ってる。

*39:『ニンジャスレイヤーTRPG』のこと。あなたはネオサイタマに生きる一人のニンジャとなり、ソウカイヤ、ザイバツ、アマクダリが熾烈な三つ巴の戦いを繰り広げるif次元に身を投じることとなる。ルールブック第2版が配信中であり、本編を補完する設定資料としても楽しめる。

*40:現在ニンジャスレイヤーは『エイジ・オブ・マッポーカリプス』が大好評連載中。主人公がフジキド・ケンジから青年マスラダ・カイに代替わりし、新たな物語が紡がれる。ここから入っても大丈夫!みんな怖くないよ!

*41:noteにて展開されている『ニンジャスレイヤー』の世界により深くダイヴできるコンテンツ。月額490円で連載中の『エイジ・オブ・マッポーカリプス』の加筆修正版や設定資料エピソード、そしてここでしか読めない限定エピソードが楽しめる。チョー面白いのでみんなで読もう。

「とろぐちょサキュバス」はタイトル通りの内容でタイトルの100倍酷い惨状なので最高だ

 やられた、と思った。

 ここ最近はアンテナを張ることをおろそかにしていたので、突然鈍器で殴られたような衝撃だった。よくよく見ると2020年に完結済とある。リアタイで追いたかった。

 何かというと「とろぐちょサキュバス ~クソ雑魚サキュバスがスライムと一緒にエグい成長し続けて冒険者とかをとろぐちょセックスでアクメさせまくる話~*1という小説の話だ。

とろぐちょサキュバス ~クソ雑魚サキュバスがスライムと一緒にエグい成長し続けて冒険者とかをとろぐちょセックスでアクメさせまくる話~

「いかにして興味を引くか」の核実験場になっているWeb小説界隈では、異様にタイトルの長い作品は珍しくない。可処分時間は有限である。氾濫するコンテンツの荒波を渡るために、読者も読む前からどんな内容でどんな話なのか知りたがるのは当然のことだろう。

 それにしてもこのタイトルはちょっと身も蓋もなさすぎやしないか。そう思ったのがページを開いたきっかけである。しかしながら、まんまと乗せられた。あっという間に引き込まれてしまった。めちゃくちゃ面白い。

 この作品は、マジのガチで「クソ雑魚サキュバスがスライムと一緒にエグい成長し続けて冒険者とかをとろぐちょセックスでアクメさせまくる話」を積み重ね、次々とファンタジー世界の生態系、文化、営み、信仰など何もかもを破壊していく一大スペクタクル物語だ。

 読み終えてからドバドバと溢れ出るパトスを抑えきれず、ひたすら文字を打込んでできたのがこの感想文だか紹介記事だかよく分からない文章である。

 

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読書中の脳内の様子



 

ここからは核心に触れている部分もあるので、タイトルにちょっとでも引っかかるものがあればこんな記事なんて閉じて早く読み進めてほしい。あと当然ながらR-18作品なので未成年は回れ右してください。

 

 ネタバレありと書いたが、特に気にせず読み進めてもらって問題ないと個人的に思う。そもそも表題に書いてあることが全てであるし、恐ろしいことにこの作品は各話タイトル一語一句そのままのことしか起きない*2

 だが、想定を上回る惨状が引き起こされ、何もかもドロドロのぐちゃぐちゃになってしまう様は間違いなく読者の想像を超えるだろう。

 

ただのえっちな小説だとナメてかかったらディザスター、パンデミック、パニックホラーものだったし人は死ぬ

 物語はクソ雑魚くて発生直後に死ぬはずだったサキュバスとスライムが奇跡的にマッチングしたことに端を発する。サキュバスの愛液やら体液を啜ったスライムはどんどん肥大化し、スライムに犯され続けるクソ雑魚サキュバスは膨大な快楽を溜め込んで成長する。スタート時点でノーベル賞ものの永久機関が誕生したのだ。

 サキュバスの体液には媚薬成分が含まれており、それをひたすら摂取し続けたスライムにも当然媚薬効果があるのでセックス快楽を知る生物なら近づいただけでも発情してしまう。しかもサキュバスから際限なくエサが供給されることで媚薬スライムは分裂・増殖を繰り返し、とんでもない数と大きさに膨れ上がっている。おまけに格上の相手に対しても果敢に飛びかかる習性を持ち、愛液や精液をしゃぶりつくすために体中を舐め回す熟練のテクニックまで学習しているのだ。

 媚薬スライムはクソ雑魚サキュバスの経験からウルトラテクでアクメ、射精させて体液を啜ることに最適化されており、獲物の命を奪うことはない。しかしながら捕まったら最後、哀れな犠牲者は死ぬまで快楽攻めに合い、体液という体液を絞り取られ、快楽に脳を焼き切られて死ぬのだ。

 そんなヤバい存在が森に生まれたらどうなる?発情した獣はスライムに捕えられて死に絶え、森の生態系は狂い、遊びに行った子どもは村に戻らず、不審に思い捜索に出た冒険者が消息を絶ち……やがてそれは森から現れた。破局の始まりと共に。

 さながら、ワールド・ウォーZの人類敗北バージョンである。人類はゾンビではなくクソ雑魚サキュバスと媚薬スライムに敗北する。

 そういう物語である。

 

サバイバルセックスバトルのあまりの迫力に泣き出してももう遅い

  本作において、サキュバスにとってのセックスとは捕食行為であり、獲物となる生物の快楽堕ちは死を意味する。本当に死ぬ。名前付きの登場人物の大体が死ぬしモブはもっと死ぬ。みんな腰を振って絶頂しながら死ぬ*3

 じわり、じわりと広がってゆく快楽。むせかえるような媚薬の匂い。徐々に蕩け出す理性。

 理性をもつ生物にとって正常な判断を保てなくなるのは命に関わる問題だ。しかもセックス快楽ときた。発情した獣に堕するなどもってのほかだ。故に、このサキュバスとスライムを見て慢心したり油断する者はいない。誰もがこの事態に生命の危機を覚え、あるいは強者の気配に胸を躍らせ、武器、人員、その他持ちうるもの全てを総動員する。どちらが生存(いき)るか死滅(くたば)るか、ここにクソ雑魚サキュバスとの命がけのセックスバトルが始まった。

 あるものは地面に大穴を空け森ごと沈め、あるものは理性があるうちに頭を噛み砕かんと顎を開き、またあるものは快楽に動じぬ機械人形をけしかける。ただスライムの物量で全てを飲み込まんとするサキュバスに対し、相対する者たちは知恵と策、あるいは恵まれた肉体でもって対抗する。戦いはどんどんインフレしていき、中盤以降は息をもつかせぬ攻防の様相を呈するようになり、そして皆♡まみれになって敗北する*4

 誤解しないでほしいのが、これがただシチュエーションを羅列しているだけではないということだ。この世界にはこの世界の文化、生活、ルールがあり、想像力が十分膨らむほどの情報開示が丹念な地の文によってなされている*5奴隷の少女から魔王に至るまで、サキュバスに対峙する彼らには彼らの人生があり、その人物造型には共感や理解を抱けるだろう。

 だからこそ、敗者に待ち受ける敗北公開アクメの無様さが耐え難いのだ。

 稀代の錬金術師が、精悍な姫騎士が、切れ者の軍師が、次々と敗れ去ってゆく。

 自らに絶対の自信があるものほど、そのあんまりにもあんまりな恥辱に自尊心をズタズタにされ、一方で経験したことのない興奮によって理性が蒸発し快楽で脳を焼き切れていく。そうなれば後に残るのはただ腰を「ヘコ♡ ヘコ♡」するだけのオス肉、メス肉しかいない。先ほどまで共感や理解を抱いていた者がソレだ。

 その辺の野犬も勇敢な冒険者も700歳エルフ賢者もゲス盗賊頭領も美貌の吸血鬼もみーんなぐちゃぐちゃのドロドロだし、相棒への信頼感も秘めたる思いも競争心も身分格差も師弟関係も強者の自負も全部セックス快楽の苗床になって蹂躙される様は侘しさすら覚えてしまう。無様敗北の魔術師である。

 物流は途絶えて餓死者が出るし、街は荒くれがのさぼるようになって治安は悪化し、安価なドラッグ*6が流通するようになり、対スライム障壁は決壊する。ともすれば重厚長大な群像劇になりえたであろう異世界が、とろぐちょセックスで押し流されてゆく。世界がサキュバスとスライムに犯され、崩壊の一途をたどってゆく様は破滅のカタルシスに満ち溢れている。さながら車をバカスカ大破炎上させるマイケル・ベイや、病院や空港を丸ごと爆破するクリストファー・ノーラン作品のようだ。

 

 そして、世界が終末を迎える直前、クソ雑魚サキュバスとおチンポ勇者による世界救世を賭けたセックス頂上決戦が勃発する。

 

世界を変革する極大な百合物語に崩れ落ち跪け

 『囀る法悦のズィルゥ』、というサキュバスがいる。

 彼女は人間にボコボコにされ死にかけたところで、命を繋ぐためサキュバスの少女の根城である森に無断で侵入し、格の違いを見せつけられて配下に下った野良サキュバスだ。 サキュバスの少女のとろぐちょレズセックスの洗礼でズィルゥは身も心も『女王様』である彼女の虜となり、自ら「下僕」「所有物」「専用アクメ肉」に成り下がったが、サキュバスの少女にとっても彼女は特別だった。初めて出会った同族であり、何より快楽で死なないのである。

 二人にはとろぐちょレズセックスができればそれで大満足なのだが、一人と一匹だけでもえらいことだったのに、もう一人サキュバスが増えるともはや手がつけられなくなるのは自明である。媚薬スライムが際限なく産み出されるので人間や魔族はもちろん黙っていない。どうにかしないと領土がぐっちょぐちょに侵食されるからだ。

 ズィルゥにとって『女王様』とのとろぐちょセックスのない世界なんて耐えられない。なにしろ『女王様』はいくら快楽で魔力を溜め込んでいるとはいえクソ雑魚サキュバスである。矢を射かけられたら普通に死ぬし快楽が通用しないものに攻め込まれたらひとたまりもない。

 なのでズィルゥは考える。矢が届く距離に近づかれる前に射精するがごとく親スライムから子スライムを噴射狙撃させて戦闘不能に陥れ、快楽を感じない機械人形には命令術式を逆ハックし術者の脳に直接快楽を流し込んでセックス廃人化させ、いずれ目を付けられるであろう魔王に対しては先手を打ってカチコミをかけ、快楽死で人間が絶滅する前に王都に侵攻し調停を結ぶ。そのための尖兵として人間とスライムを組み合わせた生体鎧を生み出した。これは人間をスライムでぐちょぐちょに犯す動作によって身体を自在にコントロールするもので、繊細な動きに特化した媚薬スライムだからこそできる芸当である。*7

 二人には世界征服の野望も他種族への憎悪も殺意もない。マジでとろぐちょレズセックスするために生きているといっても過言ではない。しかしエコシステムの逸脱者は排除されなければならない。それは創生の女神の意志である。

 それでも二人は決して諦めずとろぐちょレズセックスすることを選んだ。勇者のおチンポに何度分からせられかけても世界に挑んだ*8

 果たして、快楽は救済に、セックスは祈りに変わる。

 結果として、二人は世界の方を創り変えてしまった。冗談でも比喩でもなく「二人で世界をめちゃくちゃにしちゃった」のである。この世界変革のあまりにもアレでコレな展開に思わず私は目を剥き、腰が砕け、脚がガクガクし、涙が出るほどの感動すら覚えてしまった。正気の沙汰ではないと思うと同時にこの物語にふさわしすぎる顛末だ、と納得してしまう。した。

 詳細についてはぜひ自分の目で確かめてほしい。「えっちな小説と思ったらディザスター、パンデミック、パニックホラーものだった」と書いたが、それも違う。世界から拒絶されてもなお固く契られた極大な百合物語*9がここにある。

 

(終わりです)

 

*1:以下「とろぐちょサキュバス」と呼称する。

*2:例えば8話のタイトルは「想像より遥かに巨大な媚薬スライムがサキュバスと同時に来たので村が滅ぶ話」であり、当然村は滅ぶ。

*3:生き残ったものは生命力が強くて死んでないか、ギリギリ死なない程度の甘イキ地獄を味わされているだけで既に快楽に脳を焼き切られてセックス廃人になっている。見ていてつらい。

*4:戦いが佳境に近づくほど語尾の♡は増え、♡♡♡♡のMAX状態になるとスパートがかかり始める。セックスバトルがクライマックスに突入している証拠だ。

*5:特に呪文詠唱の仕組みは直感的に理解でき、そのため詠唱割り込みのロジックもすんなり受け入れられるのですごい。

*6:媚薬スライムを希釈したもので退廃的快楽を喚起する。ダメ。ゼッタイ。

*7:こうして人間とスライムのピストン運動による全く新しい動力源、つまりスライムパンクが爆誕した。

*8:この時生まれた膨大な快楽の余波により大勢の人間が死んだ。

*9:と言ってしまっていいのか分からないが女女ではある。間に挟まれた男はおチンポにされ死ぬ。